チョコレート嚢(のう)胞は、卵巣嚢腫のうち、古い血が溜まったものです。卵巣嚢腫は他にも水がたまったものなどもあります。
東洋医学的にも同じようなことが考えられますし、また原因の1つにストレスやイライラも影響があります。
この記事では
- チョコレート嚢胞の症状
- チョコレート嚢胞になりやすい体質(東洋医学的な原因)、
- 生理痛の変化
- 鍼灸は効果があるのか
を解説しております。
筆者プロフィール
鍼灸師
福澤 はるか(ふくざわ はるか)
現在。薬膳や風水などを施術に取り入れながら鍼灸施術をおこなっている。
関東でエステティックに従事(支店長も経験)。父の病気を機に福岡に→北九州でリラクゼーションサロンに勤務しながら鍼灸師取得→Living開業後、結婚・出産を経験。自身も美容に関して日々、色々と試しながら良かったものをご提案しております。
詳細プロフィールはこちら
チョコレート嚢胞とは
チョコレート嚢胞は本来子宮の内側にある子宮内膜が卵巣に発生することで起きる子宮内膜症の一種です。本来、卵巣に出来た内膜病巣も月経時に剥離して経血として排出されますが、排出されない古い血液がチョコレートの様な状態でたまり、袋(嚢胞)を形成することを「チョコレート嚢胞」と呼びます。
子宮内膜症の一種である卵巣嚢腫のうち、古い血が溜まってできたのが、チョコレート嚢胞ということかなと思います…。
チョコレート嚢胞の症状
チョコレート嚢胞は生理痛に影響が
子宮内膜症の症状と同じですが、卵巣内でできるチョコレート嚢胞は、痛みが強いといわれています。
チョコレート嚢胞が大きくなり他の臓器と癒着し、生理痛だけでなく、日常生活に影響するほどの激しい痛みを起こすことがあります。
チョコレート嚢胞は、エストロゲンとの関わりが原因として考えられています。
10代より20代、20代より30代と生理痛がだんだん酷くなってきた場合は、チョコレート嚢胞が大きくなっていることも考えられます。
婦人科で早めの相談をおすすめします。
生理痛って本来ないものです
生理痛がある女性にとって、生理痛って普通かもしれません。しかし、生理痛は本来はないことが普通。
東洋医学では、体(子宮)の冷えや瘀血(おけつ:悪い血が滞ること)で起こります。
(後ほど、詳しくお話しします)
不妊にも影響がある
卵巣に「できもの」ができることで、炎症が起こって癒着したり、嚢胞そのものが邪魔で、うまく排卵ができず、不妊症に繋がるケースがあります。子宮内膜症の女性の場合、妊娠率は24%~50%といわれておりますが、重症の場合は10%以下といわれております。
チョコレート嚢胞が大きい、癒着がひどい、悪性腫瘍(ガン)が疑われる場合などは、手術で卵巣、最悪、子宮の摘出なども考えられます。
摘出となっては、不妊症ではなく、妊娠することが叶わなくなってしまいます。
先ほどもお話しましたが、妊娠適齢期の20〜30代で発症することが多いので、年齢を重ねる毎に生理痛が酷くなる場合や、生理が動けないほど辛い方は、早めに婦人科で相談しましょう。
チョコレート嚢胞に鍼灸は効果ある?
鍼灸領域(東洋医学的)でみるチョコレート嚢胞の原因は3つあります。
- 瘀血
- 湿気
- 気虚
の三つです(詳しくは後述)。
1.血を補うか、2.流れをよくするか、3.気を補うことで、チョコレート嚢胞の進行を抑える、また排出を促すなどの効果が期待できます。
チョコレート嚢胞の鍼灸的な3つの原因
瘀血(おけつ)
東洋医学では、通常の生理痛でも瘀血が原因と考えることが多いです。瘀血は捻挫などの怪我をした時にできる内出血と同じです。
月経の時に痛みが出るのは、この塊(瘀血=血の滞り)のせいです。なので、血が停滞している間は痛みを感じてしまうのです。
瘀血とは、悪い血の滞りで、さらに3つの原因があります。
- エネルギー(気)不足で滞る
- 血が不足して滞る
- 気が滞って血が滞る
気の問題(不足か停滞)で起こる瘀血は気の滞りを、血の不足で起こる瘀血は血を補うことで、流れをよくしてあげると痛みが和らいだりするわけです。
チョコレート嚢胞も同じようなイメージで、卵巣内の滞りを改善するために、気の問題の改善か、血の不足を補うことで状態の進行を遅らせたり、改善したりと期待できます。
東洋医学的には気血両虚とか肝鬱気滞(かんうつきたい)といった弁証(病名みたいなもの)で起こります。
もっとわかりやすく言えば「体質」というものです。
瘀血と気血両虚の症状
瘀血の症状は刺すような痛みが特徴的です。
また外傷後(捻挫や手術など)の痛みも瘀血が原因です。
気や血の不足で瘀血になることは、簡単に説明しましたが、気や血が不足するのは、胃腸系と心の問題が関わっています。
心(東洋医学では「しん」)は主血といって血に関わっています(西洋医学でも同じですね)。
また胃腸系(特に脾経)は、気血生成の源と言われるので、気にも血にも関わりがあります。
日々、漠然として不安があって、食事が喉を通らなかったりすると心脾気血両虚(しんぴきけつりょうきょ)証となります。
月経(生理)時に刺すような痛みがある
夜中に痛くなることがある
食欲がない
冷え性
不安感・精神的疲れがある
目がかすむ・疲れやすい
めまい・たちくらみ
肌や髪が乾燥する
睡眠障害がある
便秘がち
アザや内出血ができやすい
などの症状があれば、心脾気血両虚の可能性があります。
肝鬱気滞の症状
東洋医学での肝は、蔵血といって、月経と密接な関係があります。
また胃腸系をコントロールしていることから、西洋医学でいう自律神経の役割も果たしています。
また肝は、疏泄といって「気血水の流れ」も管理しているので、肝気が滞ると瘀血はもちろん、湿気もたまりやすく、イライラしたり、食欲にも影響がでてきます。
イライラ
喉のつまり
胃酸の逆流
食欲低下
目の疲れ・乾燥
爪がもろい
お腹が張りやすい
湿気によるチョコレート嚢胞
湿気もチョコレート嚢胞の原因と考えられます。
耳鳴りの原因でも紹介しましたが、湿気は滞ると熱にも冷えにもつながります。
また水分代謝がうまくいかなくなるので、排出が難しいと考えます。
粘り気のある経血やおりもののニオイがきつい、痰がからみやすい、足がむくみやすいなどの不調があれば、湿気によるチョコレート嚢胞を考えます。
気虚によるチョコレート嚢胞
気虚によるものは、瘀血と関係があるので、ここでは簡単に。
エネルギー(気)が不足すると、血や水分を押し流すことができません。
その結果、気や血が滞り気滞・瘀血となります。
卵巣嚢腫の代表的なツボ
チョコレート嚢胞と書きましたが、瘀血と肝鬱気滞、痰湿、気虚の代表的なツボを紹介していきます。
ただ、それが起こっている体質によって使うツボは無限に広がります。なので、、、
- 婦人科でみてもらう
- 薬と併用して鍼灸治療を行う
- 自宅でケアとして紹介するツボを使ってみる
という感じでご覧ください。
婦人科系に強い三陰交
婦人科系の不調で迷ったら、三陰交にお灸を2〜3日1回続けてみましょう。
瘀血、湿気の問題、気滞にも良いツボです。
三陰交は脾経という胃腸系の調子を整えてくれます。
脾経を整えることで、いろんなことが解決します(後述)。
血の不足には血海
画像準備中
合わせて、血海というツボも使うと良いです。
血の海なので、ここは血と関係のある病(東洋医学的)で使います。
ただ、ここにお灸をしたからと言って血が増えるわけではありません。
冷えがあるなら陰陵泉
陰陵泉も脾経のツボです。
湿気の問題や湿気による冷えに良いとされています。
またお腹のお灸も良いです。
おへそと恥骨の間で冷えてるところにお灸をしていきましょう。
温かを感じなければ感じるまで繰り返しおこなってみましょう。
湿気の停滞には行間
行間(こうかん)は肝経のツボです。
イライラしがちな方や口の中が苦い、月経不順がある方などに良いです。
万能なツボ、合谷
三陰交と同じ、それ以上に迷ったら、とりあえず合谷(ごうこく)にお灸をしておけば間違いありません。
三陰交とセットで使ってみてください。
目の疲れや便秘、耳鳴りなど、ここでは書ききれないくらい良い効果が期待されるツボですし、お灸も自分でやりやすいです。
その他のツボ
生殖器という意味では腎経のツボも良いです。
その場合は復溜(ふくりゅう)を使いましょう。
また気海も良いツボです。お腹にあるので、おへそから恥骨の間で冷たいところにお灸する感じで良いです。
血海と一緒にで、気海にしたから気が増えるわけではなく、きっかけを与える程度です。
食べるものを、ちゃんと食べるなど生活習慣を整える必要はあります。
鍼灸では効果を実感しづらい?
ここで問題なのは、血を増やすツボや気を補うツボ、湿気をコントロールするツボを使っても、一時凌ぎにしかないどころか、正直なところ、鍼灸で効果は実感しづらいと思います。
それは、途中でもお話ししましたが、気血生成の源である脾経がうまく働かないと、意味がないからです。
脾経には運化といって、気血水を流す作用があります。
つまり脾経は、気血水を作る働きと運ぶ働きがあるということです。
血を増やすツボや漢方を飲んでも、脾経の作る作用が低下していれば、食べたものを気血に変えることができません。
となれば、血虚や気虚といった気血の不足が起こります。
当然、運ぶこともできないので、湿気は体に溜まります。
また肝の気も滞りやすくなり、イライラする、月経に問題(生理痛や月経不順など)が起こります。
チョコレート嚢胞に鍼灸は効果ある?まとめ!
単に血を増やすツボ(血海:けっかい)や気を増やすツボ(気海)などでは、効果はないと考えて良いです。
必ず胃腸系の働きと肝をコントロールする鍼灸治療に加えてせ、生活のリズムやストレスコントロールが必要になります。
チョコレート嚢胞では、ホルモンバンランスの問題もあるので、腎経(過剰は疲れなど)を整えていくことも大事です。
ただ腎経をサポートしているのも脾経なので、まずは生活のリズムを整えていくことが重要です。
チョコレート嚢胞の鍼灸治療、ご相談ください
チョコレート嚢胞の痛みや生理痛の痛みなどが改善しない場合は、Livingにご相談ください。
あなたにあった鍼灸治療はもちろん、食事などのセルフケアもお伝えいたします。